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３月２２日、第２期の通算２３０回目の学習会をやりました。第４篇「商品資本および貨幣資本の商品取引資本および貨幣取引資本への(商人資本への)転化」の第１７章「商業利潤」の第１５段落からだったのですが、前段、レポーターから前回学習会の報告内容についての訂正報告があり、この点に議論を割いたこともあって、第２０段落までしか進みませんでした。
第４篇 商品資本および貨幣資本の商品取引資本および貨幣取引資本への(商人資本への)転化
第１７章「商業潤」その２
◎前回報告の訂正とその議論
前回学習会(２月２２日実施)の報告について、メールで数点のコメントがありました。これを検討したところ、数点訂正に誤った解釈があることがあったと判断し、前段、説明を加えました。
・「回り道」的な説明をどう理解するか
「このような追加の形態は、次のような場合には非常に簡単にわかる。たとえば1エレのリンネルが２シリングだとしよう。私がそれを転売して10％の利潤をあげようと思えば、私はその価格に１０分の１をつけ加えなければならない。つまり、１エレを２シリング２･2/5ペンスで売らなければならない。そうすれば、その現実の生産価格と販売価格との差額は２･2/5ペンスであって、これは２シリングについて10％の利潤である。この場合には私が実際に買い手に1エレを売る価格は、ほんとうは１･1/10エレの価格である。または、結局同じことになるが、ちょうど、私が買い手には10/11エレだけを２シリングで売って、1/11エレは自分のところに残しておくようなものである。じっさい、1エレの価格を２シリング２･2/5ペンスと計算して、私は２･2/5ペンスで1/11エレを買いもどすことができるのである。だから、これは、商品の名目的な価格引上げによって剰余価値または剰余生産物の分けまえにあずかるための回り道でしかないであろう」(294頁)
筆者は、このような「回り道」をマルクスが持ち出してくる理由が分からず、商業利潤が「剰余価値または剰余生産物の分けまえ」だということを示すために「回り道」を持ち出していると推測したのですが、読み方を間違えていました。「このような追加の形態」とは商業利潤のことではなく、「商人は……その実質価値を越える名目価値の超過分を取りこむ」(前段落)という商業利潤についての誤った観念のことだと読み取るべきでした。「自分のところに取り残しておくようなものだ」とか「買いもどすことができる」という「回り道」の例は、商業利潤についての誤った観念を明らかにするためのものだと見なすべきです。
・ｋについて
「それ〔平均利潤〕は、生産的資本の総体が生みだす総利潤によって規定されている。しかし、それは、前述のように生産的資本の総計が900で利潤が180ならば平均利潤率は180／900＝20％だというように生産的資本の総計にたいして計算されるのではなく、900が生産的資本で100が商業資本ならば平均利潤率は180／1000＝18％だというように生産的資本の総計・プラス・商業資本にたいして計算されるのである。だから、生産価格はｋ(費用)＋18であって、ｋ＋20ではないのである。平均利潤率には、総利潤のうち商業資本の手に落ちる部分がすでに算入されている。それゆえ、総商品資本の現実の価値または生産価格はｋ＋ｐ＋ｈ（このｈは商業利潤）に等しいのである。つまり、生産価格または産業資本家自身が売る場合の価格は、商品の現実の生産価格よりも小さいのである。または、諸商品の総体を見れば、産業資本家階級がそれを売る価格は、その価値よりも小さいのである」(296-297頁)
第１篇の利潤のところに費用価格(ｋ)という概念がでてきます。これはｃ＋ｖに相当します。すると商品の価値はｋ＋ｐという形で表わされます。商業利潤が登場すると、ｋの概念が修正されるのか、それとも元のままで変わらないのかという問題が生じます。この段落にｋ＋18(またはｋ＋20)とｋ＋ｐ＋ｈという二つの数式が出てきます。筆者は、同じｋであってもその数値は異なると解釈したのですが、それは誤りでした。
後者のｋ＋ｐ＋ｈの場合、ｐは産業資本家が取得する利潤(＝産業利潤)、ｈは商業資本家が取得する利潤(＝商業利潤)になります。するとｋは先の本来の費用価格ｃ＋ｖに相当することは明らかです。
問題は前者のｋ＋18の場合はどうかです。ｋ＋18のｋには二つの可能性があります。数字を当てはめて考えましょう。鍵は18をどう解釈するかです。これを価格と見なすなら18はｈ(商業利潤)になります。するとｋ＋18は1080（商人の販売価格）だということになります。ｋはｃ＋ｖ(720ｃ＋162ｖ)ではなく、ｃ＋ｖ＋ｐ(720ｃ＋162ｖ＋162ｐ)になります。
ｋはｃ＋ｖではなくなります。他方、18は平均利潤率の可能性があります。そうだとすれば、18％は総資本（産業資本と商業資本との合計）に対する総利潤の割合だということになります。するとｋ＋18のｋは本来の費用価格だと見なされ、この数式は900（720ｃ＋180ｖ）＋162（18％の産業利潤）＝1062になります。したがってｋ＋18は産業資本家にとっての生産価格だということになります。どちらの解釈が正しいでしょうか。後者の解釈、すなわち18とは平均利潤率18％の産業利潤162であり、ｋは本来の費用価格(ｃ＋ｖ)だと見なすべきです。前回学習会の報告で、筆者は、18を価格と見なし、ｋを本来の費用価格とは異なるとしたのですが、それは誤りでした。ｋがケースによって数値が異なるというのは不自然です。ｋあくまでもｃ＋ｖ部分だとするべきでした。
・新日本出版社訳新版の訳注は適切か
「つまり、生産価格または産業資本家自身が売る場合の価格は、商品の現実の生産価格よりも小さいのである。または、諸商品の総体を見れば、産業資本家階級がそれを売る価格は、その価値よりも小さいのである。たとえば前にあげた例では、900（諸費用）・プラス・900の18％、すなわち900＋162＝1062である。ところで、商人は自分にとって100の費用がかかる商品を118で売ることによって、確かに18％を上乗せする。しかし、それだからといって、彼が100で買った商品は118の価値があるのだから、彼は商品をその価値よりも高く売ることにはならない」(297頁)
新日本出版社版にはアンダーライン部分に訳注があり、「〔商業資本の回転の計算において〕厳密さを欠く」として説明が加えられています。筆者はこの説明は当たっている面があるとしてこの訳注をそのまま引用したのですが（前回報告参照のこと）、訳注は不適切だとのコメントが寄せられました。この箇所を改めて検討した結果、筆者は、この訳注は当たっていないと判断し直しました。118と18％という数字が出てきますが、じつは草稿では110と10％になっています。マルクスは単に、商人が100で買った商品を110で売るなら10％を上乗せすることになるが、それは価値以上で売ることを意味しない、と言っているに過ぎません。ここではまだ商業資本の回転はテーマにはなっていないのです。エンゲルスが、このようにわざわざ数字を変えてしまったこともあって、このような誤解が生じたように思われます。
◎今回の範囲
以下（第１５段落から）は今回の範囲になります。
商人資本の相対的な大きさは、その回転の速度に反比例する
「他の事情はすべて変わらないと前提すれば、商人資本（といっても小売商人の資本は一つの雑種で例外である）の相対的な大きさは、その回転の速度に反比例し、したがって再生産過程一般のエネルギーに反比例する」(298頁)
商人資本の自立化の目的の一つが流通期間の短縮にあること、そして回転速度が増せばその分だけ商人資本の大きさが産業資本に比して相対的に小さくなること――ただし産業資本総体が増大するなら絶対的に増大することがあり得る――は明らかです。
科学的分析の進行と歴史的発展の進行との関係――産業利潤と商業利潤との関係ではどうなるか
「科学的分析の進行のなかでは、一般的利潤率の形成は、産業資本とその競争から出発して後にはじめて商人資本の介入によって訂正され補足され修正されるものとして現われる〔草稿は「見える」〕。歴史的発展の進行のなかでは事柄は正反対である。諸商品の価格をはじめて多かれ少なかれ商品の価値によって規定するものは商業資本である。そして、一般的利潤率がはじめて形成されるのも、再生産過程を媒介する流通の部面でのことである。最初は商業利潤が産業利潤を規定する。資本主義的生産様式が広がって生産者自身が商人になってからはじめて、商業利潤は、総剰余価値のうちの、社会的再生産過程に携わる総資本の一可除部分としての商業資本に帰属する一可除部分に、縮小されるのである」(同前)
草稿では、この文章は一つの段落になっており、さらに冒頭部分にＬ字記号が付されています。この箇所は覚書きのようなものだと言えます。
まず一般的利潤率は産業資本の競争によって形成されるものとされました。その後、それは商人資本の介入によって訂正・補足さるとされましたが、これこそ科学的分析の進行だとマルクスは言うのです。ところが、歴史的に見ると、商業資本(商業利潤)が産業資本(産業利潤)に先行します。科学的分析の進行と歴史的発展の進行とは真逆になっています。この点について、両者の進行は一致する場合と、このケースのように一致しない場合とがあるとの指摘がありました。それはなぜなのかということになるのですが、ここでのテーマではないので、議論を避けました。ここでは「経済学批判への序説」から引用し、参考にしてもらおうと思います。土地所有と資本との関係について触れられていますが、産業利潤と商業利潤との関係についても同じことが言えるように思います。
「……土地所有が支配しているすべての形態では、まだ自然的関係が優勢である。寶本が支配している形態では、社会的・歴史的に創造された要素が優勢である。地代は資本なしには理解できない。ところが、資本のほうは地代なしでもじゅうぶん理解できる。資本はブルジョア社会のいっさいを支配する経済力である。それが出発点をも終点をもなさなければならず、また、土地所有よりもききに展開されなければならない。資本と土地所有とが別々に考察されてから、両者の相互関係が考察されなければならない。／それゆえ、経済的諸範疇を、それらが歴史的に規定的な範疇だった順序にしたがって配列することは、できもしないし、まちがいでもある。むしろ、諸範疇の順序は、それらが近代ブルジョア社会で互いにもっている連関によって規定されているのであって、この連関は、諸範疇の自然的順序として現われるものや.史的発展の順序に対応するものとは、まさに逆である。ここで問題になるのは、経済的諸関係がさまざまな社会形態の継起のうちに歴史的に占める関係ではない。まして、『観念のなかでの』（プル一ドン)(歴史的運動のぼやけた表象のなかでの）経済的諸関係の順序などではなおさらない。問題なのは、近代ブルジョア社会のなかでの経済的諸関係の編成なのである」（「マルクス経済学レキシコン②方法Ⅰ」63-65頁からの重引）。
ここまでは商人資本は流通費用を要しないものと仮定されていた
商人資本が介入すると平均利潤率に補足的な修正が生じることを見ましたが、マルクスはその内容を次のようにまとめています。
「商人資本の介入による利潤の補足的な平均化では次のようなことが示された。すなわち、商品の価値には商人の前貸貨幣資本のための追加要素はなにもはいらないということ、商人が自分の利潤を得るために価格につけ加えるもの〔商業利潤〕は、ただ、商品の価値のうち生産的資本が商品の生産価格の計算に入れないで除いておいた部分に等しいだけだということ」(298頁)
次にマルクスは「この貨幣資本は、産業資本家の固定資本のようなもの、といってもまだ消費されていないのでその価値が商品の価値の要素にはなっていないかぎりでの固定資本のようなものである。すなわち、商人は、商品資本の彼の購買価格によって商品資本の生産価格＝Ｇを貨幣で補填する。彼の販売価格は、前に述べたように、Ｇ＋⊿Ｇに等しく、この⊿Ｇは、商品価格への、一般的利潤率によって規定された追加分を表わしている。そこで、彼が商品を売れば、彼の手には、⊿Ｇのほかに、彼がその商品を買うときに前貸しした最初の貨幣資本が帰ってくる。ここでもまた明らかになるように、彼の貨幣資本はまったくただ産業資本家の商品資本が貨幣資本に転化したものにはかならないのであって、それがこの商品資本の価値の大きさに影響することができないことは、この商品資本が商人にではなく直接に最終消費者に売られる場合と同じことである。商人の貨幣資本は、事実上はただ、最終消費者のする支払を先にするだけである」(298-299頁)と書いています。
固定資本の例えは分かり易くありませんが（商品価値に占める商業利潤部分は、固定資本の総価値のうちの摩耗分のようなものだ、ということでしょうか）、この段落で大事なのは、ここではなく後半部分です。これと同じことは前章でも述べられているのですが、もう一度文章に沿って確認したいと思います。商人資本家は自ら用意した貨幣資本を前貸しします。この貨幣資本はまだ商品資本に転化していないのに、どうして「彼の貨幣資本はまったくただ産業資本家の商品資本が貨幣資本に転化したものにはかならない」と言えるのでしょうか？ この意味を理解するヒントは末尾の「商人の貨幣資本は、事実上はただ、最終消費者のする支払を先にするだけである」という文章にあります。商人資本の機能は、産業資本のＷ’－Ｇ’を代理することです。商人資本の前貸し(Ｇ－Ｗ)は、産業資本の商品資本の貨幣資本への転化を媒介するための出発点になります。商人資本は、商品資本の貨幣資本への転化を果たすため産業資本から商品資本を引き受け、その後それを消費者に販売することによって目的を果たします。つまり出発点としての商人資本は、消費者への販売すなわち商品資本の貨幣資本への転化を先取りして貨幣資本を前貸ししているのです。この意味で商人資本の貨幣資本は「まったくただ産業資本家の商品資本が貨幣資本に転化したもの」だということになります。
商品資本の流通に流通費が生じることは避けられず、その費用は
「とはいえ、このように言うことが正しいのは、ただ、これまでと同じように、商人が少しも空費〔Unkosten〕を使わないということ、すなわち、彼が商品を生産者から買うために前貸ししなければならない貨幣資本のほかには、流動資本であろうと固定資本であろうとどんな資本も商品の変態すなわち売買の過程で前貸しする必要がないということを仮定する場合だけである。ところが、この仮定のとおりにはいかないということは、すでに流通費の考察（第二部第六章）で見たとおりである。そして、このような流通費は、一部は商人が他の流通担当者たちから請求できる〔草稿「担当者たちに補償する」〕費用として現われ、一部は直接に彼の独自な業務から生ずる費用として現われるのである」(298-299頁)
ここまでの論述で商品価値から控除されるのが商業利潤だけだったのは、商人資本は商品の購買のため以外に前貸しせず、流通のための諸費用が生じないと仮定したからです。しかし実際には、このような諸費用は不可避であり、この諸費用が貨幣資本に加味されねばなりません。なお、ここに「空費」という言葉が出てきますが、草稿にはこの言葉は無く、「Ｋ＝0」になっています(ちなみに、このＫは費用価格ではなく流通費を意味します)。空費とは価値形成的ではないものの必要な支出になります。エンゲルスが、Ｋ＝0を空費という言葉に変えた理由は不明ですが、流通経費も空費に違いないのでそれ自体問題がないかのようですが、疑問なしとはしません。というのは、ここではＫ＝0と仮定するか、それともＫ＞0と仮定するかが問題となっているからです。
流通費用も商人資本の貨幣資本の追加分を成し、一般的利潤率の形成に加わる
草稿には、この箇所に「ここからＫ＞ 0の場合を考察する」とあるのですが、現行版にはこの文言はありません。草稿は、流通費が生じる場合を考察することが課題だと明記しているのですが、なぜかエンゲルスは削ってしまっています。でも筋を間違えなければ構わないでしょう。
「このような流通費がどんな種類のものであろうとも、すなわち、純粋に商人的な業務そのものから生ずるもので商人の独自な流通費に属するものであろうと、または、補足的な、流通過程のなかで加わってくる生産過程、たとえば発送や運輸や保管などから生ずる費目を表わすものであろうと、とにかくこのような流通費は、商人の側で、商品購入に前貸しされた貨幣資本のほかに、つねに、これらの流通手段〔流通業務、発送業、輸送等の業務に必要とする手段――新日本出版社版の補記〕の購入や支払に前貸しされた追加資本を前提する。この費用要素は、流動資本から成っているかぎりでは全部が、固定資本から成っているかぎりではその損耗の程度に応じて、追加要素として商品の販売価格にはいる。そして、純粋に商業的な流通費のように、商品の現実の価値追加分を形成しない場合にも、名目的な価値を形成する要素として商品の販売価格にはいる。しかし、流動資本であろうと固定資本であろうと、この追加資本全体が一般的利潤率の形成に加わるのである」
ここまでは、商人資本の貨幣資本は商品資本の購入のためだけに前貸しされ、流通費は無いものと仮定されました。しかし実際には流通費は生じるのであり、ここからは流通費が仮定され、この前提のもとで考察が進みます。流通費には、純粋に商人的業務から生じる諸経費と、流通過程の生産的業務から生じる諸経費とがあるのですが、どちらも追加資本をなし、この追加資本の全体も一般的利潤率の形成に加わるというのです。この追加資本には、それが価値形成的なのか否かという点のほかにも、不変資本と可変資本や流動資本と固定資本といった区別も存在します。これらが流通過程で、商品価値の実現や利潤率の形成にどのように影響するのかという問題が出てきます。
ここでは追加資本は純粋な流通費にのみ費やされるものと仮定される（運輸等の生産過程は無視される）
「純粋に商業的な流通費（したがって発送や運輸や保管などの費用を除いて）は、商品の価値を実現するために、この価値を商品から貨幣へであろうと貨幣から商品へであろうと転化させるために、商品の交換を媒介するために、必要な費用に帰着する。その場合、もしも流通行為のなかで続行されるような、そして商人的業務がそれとはまったく別に存在しうるような、生産過程があっても、それはまったく無視される。じっさい、このような生産過程としては、たとえば現実の運輸業や発送業は商業とはまったく別な産業部門でありうるし、また事実そうでもある。また、これから売買される商品が埠頭やその他の公の場所に積んであることもありうる。そして、このようなことから生ずる費用は、商人がそれを前貸ししなければならないかぎり、第三者によって〔草稿にはこの文言はない〕商人の勘定として計算される。すべてこのようなことは本来の卸売商業に見られることであって、そこでは商人資本が最も純粋に、他の諸機能と最も混合されずに現われるのである。運輸業者や鉄道経営者や船舶運航業者は『商人』ではない。われわれがここで考察する費用は、買うことの費用であり、売ることの費用である。すでに前にも述べたように、このような費用は計算や簿記や市場操作や通信などに帰着する。そのために必要な不変資本は、事務所や紙や郵便料金などから成っている。その他の費用は、商業賃金労働者の充用に前貸しされる可変資本に帰着する。（発送費や運輸費や関税前払などは、一部は、商人が商品を買い入れるときにそれを前貸しするものと見ることができ、したがって商人にとっては購買価格にはいるものと見ることができる。）」(299-230頁)
商人資本の追加資本といっても、ここでは運輸といった生産的要素は無視(捨象)されます。つまり追加資本は純粋な流通費だけだと想定されます。まず純粋な流通費はどういうものからなるかが問題になります。この費用のために貨幣資本が前貸しされるのですが、それは計算や簿記や市場操作や通信などのためのものです。そして、この資本はどの資本と同様に不変資本と可変資本とからなります。不変資本として事務所や紙や郵便料金などが挙げられています。可変資本は商業労働者の賃金のためのものです。
「これらいっさいの費用は、商品の使用価値の生産に費やされるのではなく、商品の価値の実現に費やされるのである。それは純粋な流通費である。それは直接的生産過程にははいらないが、流通過程にはいるのであり、したがって再生産の総過程にはいるのである」(300頁)
「これらの費用のうちで、ここでわれわれの関心をひくただ一つの部分は、可変資本に投ぜられる部分である」(同前)として、可変資本に焦点が当てられます（不変資本については「どのようにして商人労働はその不変資本の価値を維持して行くか」(305頁)というテーマがあるのですが、ここでは考察の対象にはなっていません）。
なお、ここに「そのほかにも次のことが研究されなければならないであろう」(300頁)としてテーマが三つ列挙されています。そのどれも重要なテーマと思われますので、紹介しておきます。
「第一に、ただ必要な労働だけが商品の価値にはいるという法則は、流通過程ではどのようにして貫かれるか。第二に、蓄積は商人資本の場合にはどのように現われるか。第三に、商人資本は社会の現実の総再生産過程ではどのように機能するか」(同前)
ここまで読み進めたところで、時間が来てしまいました。次回は第２１段落からになります。次に純粋な流通費のうち可変資本に充てられる部分に焦点が当てられます。
(雅）
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